世界最速のインディアン、を観た(NK)
オセアニアのニュージーランドについて考えるために、この映画を選んだ。2005年、ニュージーランド・アメリカ合作、ロジャー・ドナルドソン監督、アンソニー・ホプキンス主演作品。ただしニュージーランドの風景が多く出てくるわけではない。逆に米国においてニュージーランドとの差を考えさせるようにできている。1000cc以下のオートバイの地上最速記録保持者であるバート・マンローの実話に基づくフィクション。
ニュージーランドで暮らすバート・マンローは、バイク“インディアン”でアメリカのボンヌヴィル塩平原で世界記録に挑戦しようとしている。すでに引退して年金暮らし(63-67歳と想定?)だが、1920年型のバイクの改良を試みる。
描かれるニュージーランドは、米国の田舎などと似た住宅街。ニュージーランドでも田舎と思われる南端の町インバーカーギルである。隣家は、マンローの家だけが物置小屋状態の上、雑草を刈るなどしないことで住宅価値が下がることを懸念するような小市民。総じて生活水準は高く、家庭に電話があり、キッチンには各種道具がそろっているなど、60年代としては豊かな生活の一端を見せる。そもそも年金暮らしでバイクをいじり続けている主人公自体も一種の豊かさを示している。
隣人は、早朝から轟音を発生させるマンローに文句を言う。しかし、マンローが草刈のかわりにガソリンで雑草に直接火をつける一種の奇行に出ても決定的に争うわけではなく、マンローの夢を知っており、それなりに応援している。また、同好の士と思われるクラブの連中は、マンローの誕生日に資金集めのパーティを開くなど夢に好意的。評判を聞いた暴走族が喧嘩をしかけてくるが、いざ米国に出発するとなれば餞別を持ってくる。年金を払い出す係の女性は結局マンローの彼女となるのだが、これも親切。簡単に言えば、ニュージーランドは親切で優しい人々の集まりである。夢を追うにはあまりに田舎に見えるが、情熱さえあれば優しい環境に守られることもできる。ここにはすでに豊かな生活があり、満ち足りているがゆえに優しく親切な人々がいる。
借金ができることが分かって突然船に乗ることになるマンローが、ロスアンジェルスに上陸して、米国との対比でニュージーランドを見直すことになる。車が右側通行になることでめちゃくちゃな運転をするという象徴的な場面に付随して、訛りの強いタクシー運転手からサービスが悪いのにチップを要求される。物価が高いこともあってまともなホテルに泊まれないが、まずその前で強引に花を売りつけられる。米国では旅行者にたかるものやら怪しいものが多く、物価も高く、優しく親切な世界との差が強く描かれる。
最初に親切にしてくれたのは、ホテルのフロントの女性だったが、実は女装の男性だった。マンローが誰も差別しない自然な態度をとることで、親しくなり、あれこれ世話をしてもらう。マイノリティがまず優しい。次に中古自動車の業者が、やはりメキシコから来たと思われるマイノリティだが、マンローの修理技術をかって親切にする。ここでは技術のあるもの、実力のあるものが認められることが分かる。旅の途中でマイノリティのアメリカ先住民、さらに寡婦、軍人などに親切にしたりされたりしてついに目的地に到着する。
目的地ではそもそもレースに登録していなかったことで、出場すら危ぶまれる。「マシンも搭乗者もポンコツ」とみなされるが、そこで出会ったみんなに尊敬されるジム・モファットと気が合うことで支援されてテストを受けることができる。また、奇特な金持ちのスポンサーもつく。結果として2輪車での世界最高記録を樹立することになる。
結果として、ニュージーランドはそれほど多く描かれないが、米国との対比の中で、豊かで優しく親切に満ち溢れた一種のユートピアとして描かれているともいえる。暴走族はいても根は優しいし、夢も希望もある。物価は高くないし、年金生活も適切に送れるようだ。それぞれ車も電話も持っていて、パーティもするしダンスも踊る。米国のように戦争の影(当時ベトナム戦争)もなく、マイノリティに囲まれることもない。魅力や技術があれば生き延びることができる米国とは似ているが異なるのがニュージーランドに見える。マンローもインバーカーギルという町の名を誇りを持って語るのである。
6 Comments:
NKさん、まるちゃんです。元気そうですね。最近は、自宅に帰ってからの時間を活用して色々パソコン関連のプライベートワークもしていますので、興味あるブログなどのピックアップも徐々にやっています。また、会いましょう!
これ観たよ。いい作品だったねぇ。自分のブログにも書いたんよ。
http://blog.goo.ne.jp/kumamotokuma/e/b69c18ebf81b2e8c8dc464402b04c9a7
今日は暑かった。
おー、今日は反応早くてうれしいです。実はこの映画も金閣寺もそもそも宿題の手伝いですが・・・。
俺、子供の宿題の手伝いなんか絶対やらないね。真冬に星座の観察を付き合ったことはあるけど。
ちなみに子どもの宿題の手伝いといっても自分のためです。川端とか三島なんていまさら読まないけど、読むとふーんと思うし副作用として子どもと話題くらいになる。子どもが私の書いた文を読むかは不明。
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