だってBだから

へんなおじさんたちのブログ。

Monday, May 19, 2008

最高の人生の見つけ方、を観た(NK)

原題は「棺おけリスト」で、棺おけに入るまでにやりたいリストのこと。余命半年を言い渡された対照的な二人が、一緒にリストを書いて旅に出る。グローバーフィールドと比較して、人生にあまり突っ込んだ問題意識があるとも思えないが、いかにも西海岸の太陽の中でアメリカらしく見せる映画なんだろう。
設定は陳腐で、金持ちの病院経営者とまじめな自動車整備工が病院で同室になる。病院経営者は自分の病院に二人部屋しか用意していないのでこうなったという瑣末なリアルさはある。ふたりとも癌で余命いくばくもないことを知る。信心深い整備工は、棺おけリストに、人を幸せにする、とか書いていたが、経営者は、世界一の美女とキスをするなどと書き加えていく。友達になったふたりは、これを実行するために世界を旅することにする。
もっとも、金持ちが考えることがキャビアを食べたりすること(ただ思い出があるのだが)だったりするが、まじめだった整備工がなぜ人にたかって軽々と旅行するかは最初はつかめない。スカイダイビングやチベットの山登り、ピラミッド見物は目的ではない。サーキットを借り切ったときにちょっと熱い部分が出てくる程度なのだ。
この話が光るとすれば、まじめな整備工は、何に向き合いたかったか、というところだ。結局妻が家族になってしまっていた、子供が独立した、自分がふとやることがなくなっていた、という誰でも出会うふとした空白に、遠くに行くことで向き合い乗り越えたかったのだ。経営者は「長らく会えなかった娘に会いたいということを隠している」というありふれたプライドとの戦いみたいなものしかないのだが、この整備工は本当は学者になりたかったタイプだけのことはあって、いろいろ深いことを考えているのだということはまあ小さな見所だ。結局夫婦が向かい合う瞬間はわずかだが実現し、それぞれがちょっとゆがんだ思いを秘めたリストは消しこまれて終わる。
ジャック・ニコルソンの怪演はいつものように見ものではある。全体には「ええ話や」という快感も残る。棺おけリスト作ろうかな、という気にもなる。家族との関係を見直そうとは思わないが、ただ記録することが人生や家族の意味だというほどのリアルの追及(自分にはかなり説得的だったが)ではない常識的な観点をもつことができる。たぶん、これから何をするか、というリストであることが、これまで何をしてきたか、のリストよりも重要だということは、人生の最後まで言えるのだ。やったことが少ない若い時期ほど履歴書が意味を持ち、歳をとるほど持たなくなるのと似ている。

2 Comments:

Blogger kumamotokuma said...

この映画観たいな。俳優って、役が俳優になるタイプと、俳優が役になるタイプがあって、ジャック・ニコルソンは典型的に前者だね。後者ですぐに思い浮かぶのはロバート・デ・ニーロとかメリル・ストリープかな。

でも、ほんとに年取ると過去の意味なんかどうでもよくなっちゃうね。未来もあるんだかないんだかわかんないけど。今、この瞬間が一番尊い気がするようになってきた。畜生と一緒だ。

Tuesday, May 20, 2008 4:17:00 AM  
Blogger NK said...

確かに、うまいね。役が俳優になるって表現は。いまこの瞬間が一番と尊いという結論が、考えた末に獲得できれば、畜生とは一線を画すでしょう。

Monday, May 26, 2008 1:03:00 PM  

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